終わりの始まり
バタバタの心の自由軟禁状態から抜け出て、
やっと談志の事を書く気になったら、
いやはや、キム・ジョンイルも死んだ。次々死ぬねェ~。
キム将軍様には何ら感慨もないが、談志師匠はねェ~。

最後の落語家が死んだ、という感じです。
いつだったか紀伊國屋ホールで観たのが見納めになりました。
右から読んでも左から読んでも(回文は縦書きです
が、ブログは横書きなもんで)談志が死んだ、は、談志が死んだ。
ダンシガシンダ。
もしかして、師匠は、この回文を残すために
談志であったのかも知れないと思わせられるような、
シャレのキツい人でした。
その一方、実は、とてもキチンとした人でもありました。
世間で言う八方破れとは、本質的に違う人でありました。
落語が好きで、多メディアの時代に、
芸の核をどうやって残そうかと真剣だったのでしょう。
かつて、僕たちがゴールデン街の飲み仲間でつくった草野球チーム、
新宿ぶんぶんの左腕エースだったT内が、
アルバイトだけでは食べていくのが大変だ、と
N東コマーシャルというCM制作会社のディレクターだった
Iちゃんの世話焼きでその会社の制作部に入れた。
しかし、T内は、一年で、
申し訳ないのですが、止めたいと言い出した。
「カメラの後ろにいると、俺は、ここじゃなくて、
カメラの前にいたいんだ、と思っちゃうんですョ」
と言う。そして、M大落研の先輩、三宅や渡辺を訪ね、
談志の内弟子となった。
女房持ちである。当然、別居です。
カミさんもえらかったよネ。
苦節数年、T内は志の輔の名をもらい、2ツ目になる。
着物も羽織も借りものでは気の毒だというので、
作詞家のA木と二人で、銀座のきし屋で仕立てご祝儀とした。
お披露目は日本橋三越ホール。
演目が終わり、パーティ会場でA木と二人で
水割りなど飲んでいると、
談志師匠と毒蝮三太夫が二人でまっすぐこちらへ来る。
「まだまだ未熟者の志の輔に、
立派なお祝いを頂戴いたしましてありがとうございました。
今後とも、よろしくご贔屓に願います」と、そんなような挨拶で、
師匠が深々と頭を下げた
いやァ~、ビックリしました。
高座とはまるで別人のような師匠を見ました。
えらいなァ~、あの人は。
A木と二人でいたく感心したのを覚えております。
常識を知り抜いているからこそ、
非常識に挑めるのだと感じ入らせられた出来事でした。
ところで、この写真、談志師匠が二ツ目の時に、
お礼かたがたつくったテレホンカードであります。
師匠も、まだまだ若かった頃ですョ。
前列右側です。初々しいです。
なぜ、これが私の手元にあるかというと、
もう10数年前、N光CCの芝刈りの帰り、
大先輩のN友先生が、浅草駅に着くと、吉原の方へ行こやないか。
“平さん”に会おやないかと申します。
“平さん“とは吉村平吉さん。
中学の頃からの赤線吉原に入り浸りW大を卒業して
風俗ライターとなり、吉原に住み続けていた人である。
この人の手引きで著名作家も数多く
吉原の女の許へ通ったという粋人です。
どういう訳か、N友さん、この人をご存じで、
吉原の近くのスナックへ、N友さんと
役者のK林さんと3人で出かけ、平さんの来るのを待った。
やがて着流しの平さんが現われると、ソープのオーナーを
二人ほど呼びましょうといって、電話をかけた。
やって来た二人のうち、ふっくらとした熟年女性の店へ
流れることになりました。
その店のウエイティングルームは、さまざまな酒瓶が並ぶ、
どこぞ、新宿か新地のクラブのようでした。
3人で、ゆったりとした気分になり
何やら一杯づつ飲んで、今日は、お風呂は結構ですと、
お断りして退散した。
その時、平さんから頂いたのが、このテレホンカードなのです。
売れる前の志の輔から、師匠の話は面白おかしく
聞かされていましたが、このテレホンカードに写る
この談志師匠のまじめそうな事。驚きですわァ~。
まっ、これも何かの縁。
ダンシ ガ シンダ。ダンシ ガ シンダ。
しかし、このブログ3回続けて死んだ人の事になってもうた。
ホントに昭和は終わるのですネ。
大きな星が堕ちる夜に
音を立てて消えていくものが遠くに近くに見えています。
日本の国から無用の用という奥行きのある文化がなくなりつつある。
どの世代からも心のクッションがなくなりつつある。
アナログでなければ、決して生み出せな
いものがなくなりつつある。
終わりは、始まっている。
いや、終わりは、中頃まで来ています。
大震災、原発、EU不況、アメリカの政治混乱、
中国の大国意識増大、北朝鮮の不安定…
数えあげればキリがないほど
出口の見えない社会になりつつあります。
世界中が、成長から分配へと、
1850年代の英国人経済学者J.S.ミルの言う如く、
システム変換をしなければ、不幸は広がり、格差は拡大し、
「希望」という、とても素敵な星も曇ってしまう。
♪見上げてェごらん~
と歌っても、夜空の星に瞬く力が
消えてしまうかもしれませんやんか。
やっぱりみんな死ぬんだなァ~。
残る命、捧げるほどの義は、この国にあるのでしょうか。
暗澹たる心に、熾烈な笑いを撃ち込んでくれた談志師匠もいません。
師匠、あちらでも、どうぞお元気で。



